「水」は誰のもの?ウォーターPPPと自治のゆくえ


本日は、自治体議員政策情報センター・虹とみどり主催の地方×国政策研究会にオンラインで参加しました。午前10時から16時までみっちり勉強させていただきましたが、これからの上下水道運営を大きく変える**「ウォーターPPP」**についての内容を、みなさんに分かりやすくシェアしたいと思います。

米子市でも古い水道管の調査で緊急な手当ての必要な老朽化した水道管が見つかっています。人口減少で水道代収入が減ることから「水道料金の値上げ」も検討されています。

国が進めようとしている新しい仕組みは、果たして私たちの暮らしをどう変えるのでしょうか?


1. そもそも「ウォーターPPP」って何?

国交省の説明によると、これは従来の民間委託をさらに一歩進めた**「官民連携(PPP)」**の新しいカタチです。

https://www8.cao.go.jp/pfi/actionplan/pdf/water_gaiyou.pdf

  • レベル3.5(管理更新一体マネジメント方式):維持管理だけでなく、老朽化した管の「更新(作り替え)」まで民間企業にセットで任せる方式。原則10年という長期契約が基本です。
  • レベル4(コンセッション方式):さらに踏み込んで、民間に「運営権」を与え、料金の回収まで任せる方式。

なぜ国はこれを勧めるのか?

自治体の職員不足が深刻で、老朽化した施設の管理が追いつかないからです。窓口業務から工事計画まで「まとめて民間に任せることで効率化しよう」という狙いがあります。

米子市ではレベル3.5(管理更新一体マネジメント方式)を前提に検討を進めています。


2. 「補助金が人質?」現場が抱えるジレンマ

勉強会で特に議論が白熱したのは、**「補助金との紐付け」**についてです。

実は、令和9年度(2027年度)から、下水道の汚水管の更新工事において、ウォーターPPPの導入(または検討)をしないと国の補助金が出ないという方針が示されています。

会場からの厳しい声:

「財政が厳しい自治体にとって補助金は不可欠。それを条件にPPPを押し付けるのは、まるで『人質』ではないか?」

これに対し国は、「押し付けではなく自治体の判断」としつつも、方針は変えない姿勢。地方自治の自主性が問われる大きな分岐点になりそうです。


3. 「水は究極の自治」全水道・辻谷氏の警鐘

後半では、全日本水道労働組合(全水道)の辻谷さんから、現場視点での鋭い指摘がありました。

  • 民営化の定義とは: 「市民から水のガバナンス(統治)が遠くなることこそが民営化である」
  • ガイドラインの衝撃: かつての国のガイドライン案には「首長や議会の意向、職員の雇用維持は、PPPを導入しない理由にはならない」という、自治権を軽視するかのような記述があった(現在は修正済み)。
  • 「安くなる」は幻想?: 民間企業は利益が出なければ参入しません。最終的な責任を負うのは誰か、慎重に見極める必要があります。

辻谷さんのお話の中で、印象的だったのは埼玉県八潮市での道路陥没事故を受けて実施された下水管点検での死亡事故に関するコメントです。点検は自治体からの委託により民間事業者が実施していますが、作業員への安全教育が不十分だった可能性があるということ。民間事業者が人材育成や教育をしっかりやれば、安く請け負うことはできず、民間を使うことで逆にコスト高になる可能性があるということでした。

米子市の上下水道局は、周辺町村の水質検査を請け負っており、専門的な知識を持った職員さんが活躍しておられます。今後、管理業務の民間委託が進んだ場合、こうした専門人材の育成が課題となっています。


4. 私たちにできること:バックキャストで考える

辻谷氏は、**「水は究極の自治である」**と語ります。かつて人々が水を分け合うために話し合いを重ねたことが「自治」の始まりでした。

今、私たちに求められているのは、単なる「値上げの賛否」ではなく、**「30年後、50年後にこの街の水をどう守っていたいか」**というビジョンです。

  • 現状を数字で知る: 「赤字だからダメ」ではなく、減価償却費や内部留保など、企業会計の仕組みを正しく理解し、経営をチェックする。
  • 住民が自分ごとにする: 蛇口の向こう側で何が起きているのか。広域化やPPPが、自分たちのまちの未来に本当にフィットするのか議論を深める。

とかく水道の民営化については、賛成か反対かで語られることが多いですが、本当の論点は「誰がどう決めるか」だと辻谷さんはおっしゃいます。住民自治の観点から、住民が現状をよく知って、水のことを自分ごととして話し合い決める必要があるという考えに深く共感しました。


結び

水は、文明やコミュニティを支える命の源です。

国の方針に流されるままではなく、地域の特性に合った「持続可能な水のカタチ」を、私たち自身が選択していく。そんな「住民自治」の力が今、試されています。

4月にはさらに詳しく「企業会計」を学ぶ勉強会も予定されているそうです。本当に水道代の値上げは必要なのか?しっかりと米子市の水道の会計についても学んで、チェックしていきます!


資料集

ウォーターPPPの概要

https://www8.cao.go.jp/pfi/actionplan/pdf/water_gaiyou.pdf

上下水道における 人材確保・育成に関する今後の方向性

https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001966242.pdf

令和8年度の地方財政の見通しと予算編成上の留意事項

https://www.soumu.go.jp/main_content/001053118.pdf