男性にも”子宮頸がんワクチン”が必要なわけ

所属する「HPVワクチン接種推進自治体議員連盟」の総会が11月20日に衆議院第一会館で開催されました。ちょうど上京する予定にしていたので、米子から参加することができました。


1. 開会挨拶:止まっていたHPVワクチンを「もう一度動かしたい」

冒頭、田村憲久前厚労大臣から挨拶がありました。

  • 自身が厚労大臣だったときに、副反応報道の高まりの中で「接種の積極的勧奨を一旦中止せざるを得なかった」苦しい経緯
  • その後、再び厚労大臣に就任した際、「今度こそ動かさなければいけない」との決意で、当時の三原副大臣らとともに、積極的勧奨の再開にこぎつけたこと
  • しかし再開後も、接種率はまだ十分には戻りきっておらず、ようやく「50%くらいまで来たところ」という現状認識

そして、

「HPV関連のがんは“防げるがん”であり、そのためには自治体の役割が非常に大きい。今日は自治体議員連盟のみなさんと一緒に、この流れをさらに前に進めたい」

と、今回の意見交換会の意義が語られました。


2. 自治体議員連盟とは?超党派120名超のネットワーク

  • HPVワクチン接種率の向上と、子宮頸がんをはじめとするHPV関連がんの根絶を目指す、全国の自治体議員による超党派ネットワーク
  • 共同代表は、富山県議会議員(自民)、札幌市議会議員(立憲)など、党派を超えて参加
  • 現在、参加議員は120名以上

この日は、国会議員の議連と「共同開催」という形で、総会と意見交換が行われました。


3. 接種率の“45%差”という現実:自治体間格差と「旗振り役」の存在

共同代表で産婦人科医の種部恭子県議からは、接種率と自治体格差について、具体的なデータが示されました。

  • 民間データ(ワクチンジャパン・M3)をもとにした都道府県別接種率では
  • 山形県:71%
  • 沖縄県:25%
    → その差は 45ポイント にもなる
  • 接種率が高い県ほど、キャッチアップ最終年度の「9月駆け込み」で大きく伸びている一方、もともと低い県は最後まで伸びない傾向
  • 接種をしないままキャッチアップの機会を失えば、
  • 「本来ワクチンで守れたはずの命」
  • 「守れたはずの子宮」
    が確実に失われていくという推計

印象的だったのは、

「接種率が高い自治体には、必ず“旗を振っている人の顔”が見える」

という言葉です。
情報発信や説明会、学校・地域への働きかけなど、地道な活動を誰かが担っているかどうかが、接種率に直結している実感が語られました。

ちなみに米子市では、最終学年(高校1年生)で1回接種を済ませた割合は約40%です。まずまずの結果ですが、これはキャッチアップ接種期間に市長が先頭に立って啓発してくださったおかげではないかと思っています。

1回目の接種を済ませた方は、なんとか無料接種が終了する来年3月末までに3回終わらせていただくとともに、まだの方は将来のがんを防ぐため接種を考えていただきたいです。

集会終了後に種部先生とツーショットいただきました❤️


4. 男性接種の意義:男女ともに接種すると“10年早く”救える命がある

種部先生からは、男性接種の効果についても説明がありました。

  • オーストラリアのデータでは、
  • 女性のみ接種でも、男性の尖圭コンジローマ(性感染症)は約半分に減少
  • さらに男女とも接種する「ジェンダーニュートラル接種」になると、女性の発症率も追加で大きく減る
  • WHOが示す「子宮頸がん撲滅ライン(10万人あたり4人未満)」への到達までの年数を比較すると、
  • 女子のみ60%接種の場合よりも
  • 男女とも60%接種の方が早く到達
  • 男女とも90%まで上がれば、約10年早く撲滅ラインに到達する試算

「この“10年の差”の間に失われる命と子宮の数を、ぜひ想像してほしい」

と訴えられました。


5. 「費用だけでは接種率は上がらない」:渋谷区など先行自治体の現状

渋谷区議会議員・橋本ゆきさんからは、先行自治体としての報告がありました。

  • 渋谷区では、男性へのHPVワクチンを全額公費助成
  • にもかかわらず、昨年度の男性接種者は173人、対象年齢の約3%にとどまる
  • 中野区も約5.6%、東京都全体でも対象年齢の5%程度
  • 東京都62自治体のうち、男性接種を実施しているのは約半数にとどまり、

「費用助成だけでは接種率は上がらない」

その背景として、

  • 男性側・保護者側ともに、知名度・認知がまだまだ低いこと
  • 自分の将来の健康を守る「プレコンセプションケア」の発想が浸透していないこと

などが挙げられました。


6. 男性接種で何が守られるのか:中咽頭がんと将来の医療費(折舘先生)

横浜市立大学の折舘伸彦先生からは、男性のHPV関連中咽頭がんに焦点を当てた講演がありました。

ポイントは大きく3つです。

  1. 中咽頭がんは増えているが、早期発見が難しいがん
  • 喉頭がん(主にタバコ関連)は増えていない一方、中咽頭がんは右肩上がり
  • 子宮頸がんと違い、「前がん病変を検診で見つける」仕組みがない
    → 予防できるのであれば、ワクチンで予防するのが圧倒的に優位
  1. HPVワクチンの効果は、45〜50年後に“医療費削減”として表れる
  • 中咽頭がんの発症ピークは60歳前後
  • 今12〜16歳に打っても、本格的な効果が医療費として見えるのは数十年先
  • しかし、今打たなければ、その世代が高齢になったときに確実に負担が重くのしかかる
  1. 「エビデンスのハードル」をどう考えるか
  • 中咽頭がんは年間患者数が子宮頸がんほど多くなく、発症までの期間も長い(約50年)
  • 「厳密な臨床試験だけで効果を証明する」のは現実的にほぼ不可能
  • それでも海外では、間接的なエビデンスも含めて評価し、男性定期接種を導入している

「将来の患者さんの苦しみと医療費を確実に減らせると考えられるのに、“証拠が揃わないから進めない”でよいのか」

という問いが突きつけられました。


7. 「費用対効果」の限界とジェンダーの公平性(五十嵐先生)

神戸大学の五十嵐中先生からは、費用対効果分析の限界と、公平性の視点についての話がありました。

  • HPVワクチンの男性接種について、
  • どの疾患を評価に含めるか
  • ワクチン効果が何年続くと仮定するか
  • 女性の接種率や「間接効果」をどこまで織り込むか
    といった前提条件を変えると、
    → 1人あたりの費用対効果指標が 「500万円〜2億円」まで大きくブレる こと
  • つまり、「費用対効果」という数字は、

「一見客観的に見えて、実は前提次第でいくらでも変わってしまう“あいまいなもの”」

さらに、海外の例として、

  • ジェンダー・エクイティ(性別間の公平性)の考え方
  • 単に「どちらに打った方がコスパが良いか」だけでなく、
  • 女の子だけに接種を集中させるのではなく、男の子にも予防の機会を保障するべきだという判断が行われていること

「良いものには正当な負担を、そうでないものは抑える――
そのためのツールとして費用対効果は有用だが、
それ“だけ”で命と公平性を判断すべきではない」

というメッセージでした。


8. 学生たちの声:

「教えていれば救えた命が、“知らなかった”というだけで失われている」

会の後半では、医療系学生団体 VCAN と、
「男性のHPVワクチン定期化を求める大学生有志」からのビデオメッセージが紹介されました。

学生たちからの主な訴えは、

  • 男子の定期接種化を2026年4月から始めてほしい
  • 女性キャッチアップ世代と同年代の男性にも、無料で接種できる「キャッチアップ機会」を設けてほしい
  • OECD諸国では、学校教育でHPVワクチンを扱うのは当たり前だが、日本では「触れにくい雰囲気」が根強く、
    → その結果、「正しい情報を得る前に、接種機会を逃している若者」が多いこと
  • 「教えていれば救えたかもしれない命が、“知らなかっただけ”で失われている」現実への強い危機感

署名はすでに1万8,400筆を超えているとの報告もありました。


9. 厚労省の説明:

薬事・エビデンス・説明責任という“3つのハードル”

厚労省予防接種課の前田課長からは、現在の検討状況と課題が説明されました。

大きなポイントは、

  1. 薬事承認との関係
  • 現在、男性への適応として薬事承認されている対象疾病は
    • 肛門がん・その前駆病変
    • 尖圭コンジローマ
  • 一方で、中咽頭がんは適応に含まれていない
  • 定期接種化の議論に中咽頭がんの効果をどう位置づけるかが難題
  1. 有効性をどう国民に説明するか
  • 将来の中咽頭がんの減少を、臨床試験だけで直接示すことはほぼ不可能
  • それでも、「どのエビデンスの組み合わせなら、国民に納得してもらえる説明ができるのか」が問われている
  1. 財政負担と接種回数の問題
  • 現在の薬事では「3回接種」が承認されており、そのまま定期接種にすると、
    → 年間の財政負担は非常に大きくなる
  • 海外には「男子は1回接種」で導入している国もあり、
    → 接種回数をどう設計するかも検討課題

前田課長は、

「費用対効果の評価に中咽頭がんをどこまで含めるか、
どのレベルのエビデンスがあれば“国民への説明責任”を果たせるのか――
これが今の大きな宿題」

と述べ、宮崎市など任意接種を実施している自治体からのヒアリングも進めていることを紹介しました。


10. 自治体からの問いかけ:

「格差を放置しないでほしい」「国会で何度も取り上げてほしい」

質疑の中では、自治体議員・医師から、次のような声が相次ぎました。

  • 「自治体が独自に男性接種を進めていても、
    その裏には財政的な余裕や“熱量のある担当者・議員”の存在があり、
    どうしても自治体間格差が広がってしまう」
  • 「いくら地方がデータを集め説明しても、最終的には厚労省の慎重な姿勢が“ブレーキ”になりやすい」
  • 「だからこそ、国会の場で何度もこの問題を取り上げ、
    『国として前に進む意思がある』ことを見せてほしい

また、

  • 「海外ではすでに男女とも定期接種が当たり前になっているのに、日本だけ遅れている状態が続けば、
    将来『行政の不作為』として法的に問われる可能性だってあるのではないか」

といった、かなり切迫した問題意識も示されました。

今回、提出した自治体議連から国会議員の議連にお渡しした要望書です。

私は一番遠くから参加したということで、パネルを持たせていただきました。


11. おわりに:

“防げるがん”を本当に防ぐために、今できること

今回の会合を通じて、改めて見えてきたのは、

  • 医学的には「防げるがん」であること
  • しかし、
  • 過去の積極的勧奨中止
  • エビデンスのハードル設定
  • 財政負担の議論
  • 自治体間の熱量と財政力の差
    などが絡み合い、導入が遅れている現実
  • その間にも、
  • 「知らなかっただけ」の若者が接種機会を逃し
  • 将来のがんと経済的負担を背負うリスクが積み上がっていること

です。

会の最後に、国会議員側からは、

「海外の状況や、地方議員・学生の声を踏まえ、
男性の定期接種化が一日も早く実現するよう、
超党派で政府に働きかけていく」

との決意が述べられ、会合は締めくくられました。


まとめ

  • HPVワクチンは「女の子のワクチン」ではなく、すべての若者の未来を守るワクチン
  • 「費用対効果」という数字だけでは見えない、命・公平性・将来世代への責任がテーマになっている。
  • 地方と国、専門家と政治、そして学生・市民が、同じテーブルで議論し始めていること自体が、大きな一歩。

この流れを「一過性のイベント」に終わらせず、
それぞれの地域でできること――
情報発信・学校現場での啓発・自治体での制度づくり――
にどうつなげていくかが、これから問われていきそうです。

私は、男性と女性の命を守るための「男性への接種の無償化」と命を守る方法をシルための「プレコンセプションケアの推進」を議会で訴えていきます!