減税大合唱への言いしれぬ不安〜「令和ファシズム論」を読んで〜

減税大合唱の言いしれぬ不安

このブログを書いている2026年1月23日金曜日、衆議院が解散しました。

母が無年金であると知った時から、どんなに収入があろうとも「介護のため職を失ったら」「破産したら」「私の自由が奪われたら」という不安がずっとつきまとっていました。今の介護保険のサービスだけで要介護者の生活が支えられるとは到底思えなかったからです。そんな状況では消費を抑えて預金を積み増していくしかありませんでした。だからこそ「手取りが増える」「減税する」に期待する国民やそれで景気がよくなると主張する政治家が支持を集めることに「言いしれぬ不安」を抱いています。

2月8日投開票の衆議院選挙で、チームみらい以外の与野党全てが減税を掲げるという「減税ポピュリズリム」が蔓延する現状を危惧して慶應大学教授井手英策先生の「令和ファシズム論」を急いで読みました。

以前、米子市で講演を聞いて以来、すっかり井手先生の掲げる「ベーシック・サービス論」のとりこです。ベーシック・サービスとは、教育・福祉・医療介護・住宅などの公共サービスを所得制限を取っ払って無償または安価で提供することで、実際、自公政権のもと幼稚園・保育園の無償化や児童手当の所得制限撤廃が進んでいます。

これが福祉・医療介護・住宅などに広がることによって、私たち国民が将来の進学、病気や介護が必要になった時のために自分の収入から貯金して備える必要がなくなるので、将来不安を解消し、もっと自由に生きることができるという考え方です。

ベーシック・サービスの原資となるのは税金です。税金という形でお金を国に預け、「サービスの提供で安心を得る」「税金という形で国民同士が助け合う」「税はお金持ちほど多く納めるので、同じサービスを受けることで格差が平準化する」そういった温かみのある財政論に共感しています。

ただ、今の日本では、「税が財源だなんて勉強不足だ」「とって配るなら、初めから取るな」という税に対する抵抗感が強まっているため、増税で国民生活を支えるという考えでは到底選挙に勝てそうにありません。

多くの人がふつうにくらしている。

鋭い痛みがあるわけではない。

でも、まるで少しずつやせおとろえ、

衰弱死をむかえるような、

そんな言いしれぬ不安が、

私にまとわりついてはなれない。

人々の高市首相に対する大きな期待とは裏腹に私も同じ不安に取りつかれ、本書を手に取りました。

解散の日の日経新聞の記事。マーケットの日本への評価が厳しいことが伝えられています。

公共サービスを実際に提供するのは地方自治体の役割であるため、一地方議員である私にとって、地方からベーシック・サービスを実現するというのは大きな目標の一つです。井手先生は「ソーシャルワーク」による個別の生きづらさの解消を唱えておられますが、現在それは、住民の善意に支えられており、日々の生活に余裕のない住民が担うことに限界が来ていると感じています。ボランティアに頼るのではなく、しっかりと国費を投入し、これから本格化する人口減少社会に備えるという議論はどこからも聞こえてきません。

ライフセキュリティの四つの柱

① 「ベーシックサービス」による中間層の生活保障

医療や介護、教育といった基礎的なサービスについて、所得制限をつけずに、すべての人々に無償で提供する。

② 「品位ある最低保障(Decent Minimum)」による失業リスクへのそなえ

生活扶助、失業給付を強化し、住宅手当を制度化することで、職をうしなったときの生活不安という「万人に共通のリスク」にたいするセーフティネットを再構築する。

③ ソーシャルワーク」による個別の生きづらさの解消

地域レベルで、一人ひとりの生きづらさの背後にある構造的な問題を特定し、当事者やその家族のおかれた環境ごとかえていくことで、人びとの権利をまもる。

④ 税のベストミックス

これらの施策を実現するために必要となる財源は、国税、地方税をあわせ、所得課税、消費課税、資産課税のベストミックスによって手あてされなければならない。

今回の衆院選にあたって、立憲民主党と公明党は新党を結成しました。ともにベーシックサービス論の旗のもと集まったはずですが、掲げられた政策は食品への消費税の恒久的な減税です。財源を国債(借金)ではなく政府系ファンドの創設で賄っているとはいえ、「税は助け合い」という納税への国民の納得のないベーシックサービスは、単なる「バラマキ」に過ぎません。一有権者として正直ガッカリしています。

本書は財政学の専門家である著書が、戦争前夜の我が国の財政のあり方と現在を比較して論じたもので、私にとってはかなり難解でしたが、エッセンスは受けとれていると自負しています。

2026年衆議院選挙前夜の今、思いを記しておきます。